今回は、航空における「認定事業場」とは何かという疑問に対して、航空法をもとに解説します。
目次
- 認定事業場とは?
- 認定事業場が必要な理由
- 認定事業場の種類
- 航空機の認定事業場
- 航空機の設計及び設計後の検査の能力(航空機設計検査認定)
- 航空機の製造及び完成後の検査の能力(航空機製造検査認定)
- 航空機の整備及び整備後の検査の能力(航空機整備検査認定)
- 航空機の整備又は改造の能力 (航空機整備改造認定)
- 装備品の認定事業場
- 装備品等の設計及び設計後の検査の能力(装備品等設計検査認定)
- 装備品等の製造及び完成後の検査の能力(装備品等製造検査認定)
- 装備品等の修理又は改造の能力 (装備品等修理改造認定)
- 認定事業場の検索方法
- まとめ
認定事業場とは?
「認定事業場」はひとことで言うと、「国から認められた、航空機や航空機装備品の整備を行う事業場」です。
事業場は「業務の能力」ごとに国土交通大臣の認定を受け、「認定事業場」となります。
認定事業場は、法人に対して認定がされます。個人に対しての認定ではありません。
認定事業場が必要な理由
認定事業場が必要な理由は、航空機の安全を確保するためです。
航空機の安全は、耐空証明を行うことで担保・証明ができます。
耐空証明とは、その航空機が飛行を行える安全性および信頼性を有しているか、つまり、耐空性を有しているかを様々な基準で検査することを言います。
基準には、以下の航空法第十条第4項の1号から3号の通り、航空機の性能、飛行性、強度、構造などがあり、耐空検査によりこれらの基準を満たしていると認められると、国土交通大臣によって耐空証明書が発行されます。
(耐空証明)
第十条 国土交通大臣は、申請により、航空機(国土交通省令で定める滑空機を除く。以下この章において同じ。)について耐空証明を行う。
(中略)
4 国土交通大臣は、第一項の申請があつたときは、当該航空機が次に掲げる基準に適合するかどうかを設計、製造過程及び現状について検査し、これらの基準に適合すると認めるときは、耐空証明をしなければならない。
一 国土交通省令で定める安全性を確保するための強度、構造及び性能についての基準
二 航空機の種類、装備する発動機の種類、最大離陸重量の範囲その他の事項が国土交通省令で定めるものである航空機にあつては、国土交通省令で定める騒音の基準
三 装備する発動機の種類及び出力の範囲その他の事項が国土交通省令で定めるものである航空機にあつては、国土交通省令で定める発動機の排出物の基準
航空法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC0000000231#Mp-At_10)
耐空証明を受けた航空機は、飛行できる状態になりますが、航空機は使用するに当たり、整備が必要になります。
整備の種類は、故障を防ぐための点検や保守、故障を直すための修理、改造などがあります。
耐空証明受けた航空機の使用者は、この航空機の整備や改造をする場合は、「認定事業場」に整備や改造をさせ、先ほど説明した航空法第10条4項の基準に合格していることを確認させなければなりません。
誰でも航空機を勝手に整備したりしては、安全を確保することがむずかしくなります。そのため、国土交通省が認定した「認定事業場」でしっかりと整備をするということが法律で定められているわけです。
この前提は、航空機に取りつける装備品でも同じです。
(航空機の整備又は改造)
第十九条 航空運送事業の用に供する国土交通省令で定める航空機であつて、耐空証明のあるものの使用者は、当該航空機について整備(国土交通省令で定める軽微な保守を除く。次項及び次条において同じ。)又は改造をする場合(第十六条第一項の修理又は改造をする場合を除く。)には、第二十条第一項第四号の能力について同項の認定を受けた者が、当該認定に係る整備又は改造をし、かつ、国土交通省令で定めるところにより、当該航空機について第十条第四項各号の基準に適合することを確認するのでなければ、これを航空の用に供してはならない。
航空法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC0000000231#Mp-At_19)
航空機の登録から耐空証明の取得については、航空法の解説で詳しく説明しています。こちらもご確認ください。
認定事業場の種類
航空法第二十条にもとづいて、業務の能力に応じて認定事業場の種類分けがされます。
(事業場の認定)
第二十条 国土交通大臣は、申請により、次に掲げる一又は二以上の業務の能力が国土交通省令で定める技術上の基準に適合することについて、事業場ごとに認定を行う。
一 航空機の設計及び設計後の検査の能力
二 航空機の製造及び完成後の検査の能力
三 航空機の整備及び整備後の検査の能力
四 航空機の整備又は改造の能力
五 装備品の設計及び設計後の検査の能力
六 装備品の製造及び完成後の検査の能力
七 装備品の修理又は改造の能力
2 前項の認定を受けた者は、その認定を受けた事業場(以下「認定事業場」という。)ごとに、国土交通省令で定める業務の実施に関する事項について業務規程を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならない。その変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときも、同様とする。
3 国土交通大臣は、前項の業務規程が国土交通省令で定める技術上の基準に適合していると認めるときは、同項の認可をしなければならない。
4 第一項の認定を受けた者は、第二項の国土交通省令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
5 第一項の認定、第二項の認可及び前項の規定による届出に関し必要な事項は、国土交通省令で定める。
6 国土交通大臣は、第一項の認定を受けた者が認定事業場において第二項若しくは第四項の規定若しくは前項の国土交通省令の規定に違反したとき、又は認定事業場における能力が第一項の技術上の基準に適合しなくなつたと認めるときは、当該認定を受けた者に対し、当該認定事業場における第二項の業務規程の変更その他業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命じ、六月以内において期間を定めて当該認定事業場における業務の全部若しくは一部の停止を命じ、又は当該認定を取り消すことができる。
航空法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC0000000231#Mp-At_20)
航空法第二十条でわかることは、大きく航空機と装備品の認定事業場の2種類にわけられているということです。業務の能力は5つにわけられますが、対象が航空機と装備品とあることから、全部で7通りの認定の種類があるということになります。
①航空機の設計及び設計後の検査の能力
②航空機の製造及び完成後の検査の能力
③航空機の整備及び整備後の検査の能力
④航空機の整備又は改造の能力
⑤装備品の設計及び設計後の検査の能力
⑥装備品の製造及び完成後の検査の能力
⑦装備品の修理又は改造の能力
航空機の認定事業場
航空機の認定事業場は、以下の4つに分類されます。かっこ内は、サーキュラー2-001「事業場認定に関する一般方針」における認定の呼称を示しています。
①航空機の設計及び設計後の検査の能力(航空機設計検査認定)
②航空機の製造及び完成後の検査の能力(航空機製造検査認定)
③航空機の整備及び整備後の検査の能力(航空機整備検査認定)
④航空機の整備又は改造の能力 (航空機整備改造認定)
それでは、航空機に関する「認定事業場」の能力の違いについて、詳しくみていきましょう。
サーキュラー2-001「事業場認定に関する一般方針」に詳細が記載されているので、それに沿って解説していきます。サーキュラーは、2022年6月18日施行のものです。
①航空機の設計及び設計後の検査の能力
- 国内の事業者が航空機の設計又は設計変更を行い、当該航空機について日本国の型式証明、追加型式証明の承認又はそれらの変更の承認における国が行う検査に相当する検査の一部又は全部を行う能力。
- 国内の事業者が航空機の設計を行い、型式証明を取得せず当該航空機について耐空証明を申請した場合、その設計又は製造過程について国が行う検査に相当する検査の一部を行う能力。
- 国内の事業者が修理改造に係る設計の変更を行い、当該航空機について日本国の修理改造設計承認又はその変更の承認における国が行う検査に相当する検査の一部又は全部を行う能力。
2022年5月現在、この能力の認定を受けているのは、5社のみです。
②航空機の製造及び完成後の検査の能力(航空機製造検査認定)
- 日本国の型式証明を受けた航空機について、国内の航空機製造者(航空機の最終組立を行う者(航空機の設計者又は設計者から製造について同意を受けている者に限る。))が、当該型式証明を受けた設計に従って航空機を製造し及び国の新規製造耐空証明の現状検査に相当する検査を行う能力。
- 当該航空機の型式証明に係る装備品及び当該装備品を構成する内部部品、材料等(これらを合わせて、以下「装備品等」という。)、並びに部品(いずれも新規製造品に限る。)について確認することができる。
2022年5月現在、この能力の認定を受けているのは、1社のみです。
③航空機の整備及び整備後の検査の能力(航空機整備検査認定)
航空機について、年次点検又はこれと同等以上の整備(当該点検又は整備についての確認は、法第20条第1項第4号の認定を受けた上で行うこととする。)をするとともに、国の更新耐空証明の現状検査に相当する検査を行う能力。
2022年5月現在、この能力の認定を受けているのは、42社あります。耐空証明の更新検査の能力があるということから、運航事業者やエアライン系の事業所が多く登録されていることがわかります。
④航空機の整備又は改造の能力 (航空機整備改造認定)
- 航空機を整備又は改造する能力。
自社で航空機の整備や改造が可能となるため、ほとんどの運航事業者やエアラインが認定をもっています。
装備品の認定事業場
装備品に認定事業場は、以下の3つに分類されます。かっこは、航空法の根拠となる条文を示しています
①装備品等の設計及び設計後の検査の能力(装備品等設計検査認定)
②装備品等の製造及び完成後の検査の能力(装備品等製造検査認定)
③装備品等の修理又は改造の能力 (装備品等修理改造認定)
①装備品等の設計及び設計後の検査の能力(装備品等設計検査認定)
- 国内の事業者が航空機の装備品等の設計又は設計変更を行い、その装備品等について我が国の型式承認又は仕様承認(以下、「型式承認等」という。)
- それらの変更の承認における国が行う検査に相当する検査の一部又は全部を行う能力。
- 国内の事業者が装備品等の修理改造に係る設計の変更を行い、当該装備品等について我が国の装備品等修理改造設計承認又はその変更の承認における国が行う検査に相当する検査の一部又は全部を行う能力。
②装備品等の製造及び完成後の検査の能力(装備品等製造検査認定)
- 日本国の型式証明を受けた航空機の装備品等及び型式承認等を受けた装備品等について、国内の製造者(装備品等の設計者(型式承認・仕様承認保有者又は当該装備品等が装備される航空機の型式証明保有者をいう。)
- 設計者から製造について同意を受けている者であって、当該装備品等の最終組立を行うものに限る。)が、製造及び検査を行う能力。
③装備品等の修理又は改造の能力 (装備品等修理改造認定)
- 装備品等を修理又は改造する能力。
認定事業場の検索方法
航空局から認可を受けた認定事業場は、国土交通省の航空安全情報管理・提供システム (ASIMS:Aviation Safety Information Management System)で検索することができます。
検索方法はとても簡単です。
①まず、ASIMSにアクセスします。(URL:https://www.asims.mlit.go.jp/)
②ログイン画面が表示されますので、「ユーザ名」と「パスワード」は何も入れずに「OK」ボタンを押します。(ゲストとしてのログインとなります。)
③メインメニュー画面が表示されますので、画面左下の「<認定事業場関係>」にある「認定事業場検査履歴管理」を選択します。
④認定事業場の一覧が表示されます。一覧には、「認定番号」、「事業場名」、「所属国」、「有効期間事業場の所在地(主基地)」、「担当検査官室」、「能力1」~「能力7」の項目があります。
説明の通り、認定事業場は能力ごとに分類されており、全部で7種類の能力があります。
この一覧の「能力1」~「能力7」が、これにあたります。
能力1:航空機の設計及び設計後の検査の能力
能力2:航空機の製造及び完成後の検査の能力
能力3:航空機の整備及び整備後の検査の能力
能力4:航空機の整備又は改造の能力
能力5:装備品の設計及び設計後の検査の能力
能力6:装備品の製造及び完成後の検査の能力
能力7:装備品の修理又は改造の能力
まとめ
「国から認められた、航空機や航空機装備品の整備を行う事業場」を「認定事業場」と呼びます。(航空法第二十条)
「認定事業場」の目的は、耐空性を維持し、航空機の安全を確保するためです。
認定事業場は7つの種類に分けられます。(航空法第二十条)
①航空機の設計及び設計後の検査の能力(航空機設計検査認定)
②航空機の製造及び完成後の検査の能力(航空機製造検査認定)
③航空機の整備及び整備後の検査の能力(航空機整備検査認定)
④航空機の整備又は改造の能力 (航空機整備改造認定)
⑤装備品等の設計及び設計後の検査の能力(装備品等設計検査認定)
⑥装備品等の製造及び完成後の検査の能力(装備品等製造検査認定)
⑦装備品等の修理又は改造の能力 (装備品等修理改造認定)