
10月に入り、ようやく秋の気配がしてきました。もう少しすると北日本では本格的な雪の季節になります。
冬季は雪による運航便の欠航や遅延が発生しますが、そもそもなぜ欠航や遅延になるのか、また、飛行機での冬旅を計画する場合に気を付けなくてはならないことを振り返り記載します。
今後の旅の参考にどうぞ。
飛行機の最大の敵は「雪」
冬季に北日本に向かう飛行機が遅れる最大の理由は「雪」によるものです。
どの交通機関にとっても雪は障害となりますが、飛行機にとって雪は最大の敵です。
雪の影響

2016年には大雪で混乱が続いていた千歳空港で乗客が暴れる事態が発生したり、2019年1月も大雪により100便以上が欠航になったりと大きな影響が出ました。
千歳空港ですら欠航が発生しますので、首都圏で降雪があるとその影響は甚大です。
2006年1月には首都圏の大雪により成田空港で大きな混乱がありました。2日間で離発着便合計で750便以上が欠航となりました。この時は地上の交通機関も運転を見合わせていたため、1万人が空港で夜を明かすことになり、翌日も3千人が空港で過ごすことになりました。
2014年2月にも首都圏で大雪があり、欠航便が相次ぎました。2019年2月にも首都圏で降雪があり、145便以上が欠航になりました。
雪が降るとなぜ欠航・遅延するのか
雪は飛行機の大敵ですが、なぜ雪によって欠航や遅延が発生するのでしょうか。
これらに限りませんが、主な要因は下記が考えられます。
- 視界不良
- 防除雪氷作業
- 滑走路や誘導路への積雪
- 航空管制、空港運用時間、運航乗務員の勤務時間
視界不良
航空会社各社には、飛行機の運航に関するルールを定めた規程があります。この規程の中に、安全に離着陸を行うための制限が記載されています。
「視界」がこの制限の一つにあります。航空機の性能や運航乗務員の訓練の内容などによって異なるため、この値は各社で異なります。
基準値が各社で異なるため、他社の欠航に関わらず運航できる会社や、他社が運航しているのに欠航する会社があります。
視界が一定基準を満たさない場合、飛行機は離陸や着陸することができません。天候が回復するまで待つか、見通しが立たない場合、欠航になります。
防除雪氷作業
飛行機は翼から発生する揚力を得て飛びます。
雪が翼の上にあると、翼の表面を流れる空気を妨げることになってしまい、必要な揚力を得ることができなくなるため雪や氷を取り除いたり、それらが積もったり接着しないようにする必要があります。これが主な防除雪氷作業の内容です。
防除雪氷作業は、防除雪氷作業車を使い行います。トラックにホースがついた車両です。この車両が防除雪氷液を飛行機に吹き付けることで翼の雪氷を取り除いたり、積もったり接着しないようにします。
降雪時は、航空各社の各便で防除雪氷が行われるため時間がかかることがあります。通常の運航便ダイアの想定を超える時間がかかると、遅延につながります。大雪で防除雪氷が間に合わなくなると、欠航せざるを得なくなってしまいます。
また、この防除雪氷に関連する考えに「Hold over time(ホールドオーバータイム)」というものがあります。
防除雪氷液を吹き付けて防除雪氷しますが、その効果は永続的なものではありません。そのためこの効果のある時間がホールドオーバータイムとして決められています。
この時間は外気温と並行して短くなります。そのため、防除雪氷を終えいざ出発となりますが、滑走路から離陸するまでに時間がかかってしまうと、離陸を取りやめ所定に位置に戻り再度防除雪氷が必要になってしまいます。大きな遅延につながります。
滑走路や誘導路への積雪
車もそうですが、走るところに雪が積もっていると安全に走行できないため除雪が必要になります。
特に滑走路は高速の航空機が離発着する場所ですので、雪があると非常に危険です。
滑走路や誘導路の除雪を行っている間は、滑走路が使えません。滑走路が複数ある空港では除雪しながら運用を続けられますが、滑走路が一つしかない空港では運用は完全に止まってしまいます。欠航や遅延の要因になります。
航空管制、空港運用時間、運航乗務員の勤務時間
これらは二次的なものになりますが、上記の要因によって欠航や遅延が発生すると空港や航空路で渋滞が発生します。
渋滞が発生すると、車であれば止まって待つことができますが飛行機は止まれません。そのため、出発を遅らせたり既に出発している場合は途中でホールディングを指示されます。
ホールディングというのは航空路上の所定の位置で、飛行機が円を描くように飛行しその場で待機することを指します。
これらにより燃料が不足することや、出発が遅れることによる空港の運用時間内に到着・出発が難しくなること、また、パイロットの法律や社内ルール上の業務時間を超えることとなってしまうため、欠航や遅延につながります。
気を付けること
最悪の場合を想定する
冬に旅をするということは、上記のような欠航や遅延がある可能性を念頭に置き計画することが大切です。
時間に余裕をもっておくことや最悪の場合の代替交通手段を計画することが大事です。
出発日が近くなってきたら天気予報をこまめに確認しましょう。西高東低の冬型の気圧配置になっていたり北から寒気が入ってきたりすると降雪の可能性が高まりますね。
航空会社の選択
大手航空会社(例えばANAやJAL)とLCCの選択肢がある場合ですが、その旅が出張や結婚式など重要な場合、大手航空会社を選びましょう。
なぜかというと、大手航空会社のほうが目的地にたどり着ける可能性が高いからです。また、たどり着けない場合でも手当があるからです。もちろん、LCCの何倍もお金はかかりますが、たどり着かないほうが困りますね。
例えば、上記に欠航や遅延の要因として挙げた視界不良を考えてみます。
基準値は各社異なると説明しましたが、大手航空会社はLCCと比べるとより厳しい条件でも離着陸できるようになっています。

理由は単純で、大手の航空機のほうが性能が高いからです。より精度の高い高価な装備品を搭載しており、それ相応の保守がされています。またそれに応じた運航乗務員や整備士の訓練を行っているからです。
例えば離着陸時に使用する計器着陸装置、ILS (Instrument Landing System)という装置がありますが、これにはカテゴリーがあります。猫のようにCAT1、キャットワンなどと呼びます。カテゴリーの違いは精度の違いです。
搭載している装備品によって、このILSのカテゴリー、つまり、精度に差があります。より高価なものは精度が高いです。精度が高いとより安全に運航できることから、着陸であれば視界不良の中で下げていい高度制限が低く許容されています。
つまりLCCよりも精度が高い装備品を搭載している大手は、視界不良の中でも滑走路を視認できる可能性が高く、目的地にたどり着ける可能性が高いということです。
なぜLCCがこういったものを搭載しないかは、明白ですが、コストを削減するためです。精度が低いから危険ということでは決してありません。精度が低いものにはそれ相応の基準が設けられており、その精度の中で安全に運航できるようになっています。
また、路線によりますが、全体的に大手航空会社のほうが便数も多いため、振り替えがあってもたどり着けるチャンスがあります。LCCは便数が少ないため、チャンスが低いです。運航乗務員の数も大手は余裕がありますし、絶対的な数値で比較はできませんが、色々な点から大手のほうがアドバンテージがあります。
さらには、会社によりますが、大手は欠航の際の手当があります。ホテルに泊まらことになったりした際に手当が出る場合があります。
ただ、2006年の成田空港のようになってしまうと、もはやその差はあまり関係ないかもしれません。
まとめ
飛行機が雪によって欠航や遅延となる具体的な理由から、一般的ではありますが、気をつけるべき点についても記載しました。
絶対に行かなくてはいけない用事がある場合は、天気予報や航空会社の情報をこまめに確認し早めに行動しましょう。
雪の時期は、大手航空会社のほうがたどり着ける可能性が多い場合があります。
参考になれば幸いです。
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