【航空法解説】第二章「登録」(航空法第三条~第九条)

航空法(昭和二十七年 法律第二百三十一号 航空法)を勉強したという人向けの解説です。航空法第二章「登録」(第三条から第九条)の内容を解説します。(内容は2020年4月29日時点)

概要

第二章(登録)は下記の条文から成り、航空機の新規登録や変更登録、登録記号の打刻の規定が定められています。

航空機を登録する目的は、航空機に一意の記号を割り振りその個体を識別し管理するためです。車のナンバーを登録するのと同じ考えになります。

第三条(登録)

国土交通大臣は、この章で定めるところにより、航空機登録原簿に航空機の登録を行う。

出典:航空法

「この章」というのは航空法の第二章「登録」のことで、上記「概要」で記載の通り、航空法第三条から第九条で構成されています。

「航空機登録原簿」の詳細は「航空機登録令」及び「航空機登録規則」に記載されています。

「航空機登録令」の第三条から五条には、一個の航空機につき一用紙を備えること、また、航空機登録原簿の用紙の様式及び記載方法は国土交通省令である「航空機登録規則」に記載すること、さらには、まつ消登録後20年間同用紙を保管することが定められています。

様式については、「航空機登録規則」の第一条に定める通り、同規則の「別記様式第一号」を用いることになっています。

同様式に記載する内容としては下記があり、この様式を用いて国土交通大臣が航空機の登録を行います。もちろん、国土交通大臣と法律では記載がありますが、航空局の担当部門が登録業務を行います。

<表面>

  • 登録記号欄
    • 登録記号
    • 打刻年月日
    • 打刻位置
  • 表示欄
    • 登録の目的
    • 航空機の種類
    • 航空機の型式
    • 航空機の製造者
    • 航空機の番号
    • 航空機の定置場
    • 新規登録年月日
    • 登録回復の年月日
    • 受付番号
    • 登録担当官印
  • 表示の変更更正欄
    • 事項
    • 登録年月日
    • 受付番号
    • 登録担当官印
  • まつ消登録欄
    • 原因
    • 登録年月日
    • 受付年月日
    • 登録担当官印

<裏面>

  • 所有権部/順位番号欄
    • 主登録
    • 附記登録
  • 事項欄
    • 登録年月日
    • 受付番号
    • 登録担当官印

第三条の二(国籍の取得)

航空機は、登録を受けたときは、日本の国籍を取得する。

出典:航空法

読んで字のごとくですが、航空機は登録を受けると日本国籍を取得します。

日本国の国籍記号は「JA」になります。他国はアメリカは「N」、フランスは「F」、オーストラリアは「VH」などとなっており、国ごとに記号がわかれています。

第三条の三(対抗力)

登録を受けた飛行機及び回転翼航空機の所有権の得喪及び変更は、登録を受けなければ、第三者に対抗することができない。

出典:航空法

飛行機とヘリコプターの所有権について、「航空機の登録」が自らの正当な権利を第三者に主張するための第三者対抗要件になっているということです。

第四条(登録の要件)

左の各号の一に該当する者が所有する航空機は、これを登録することができない。

一 日本の国籍を有しない人

二 外国又は外国の公共団体若しくはこれに準ずるもの

三 外国の法令に基いて設立された法人その他の団体

四 法人であつて、前三号に掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の三分の一以上若しくは議決権の三分の一以上を占めるもの

2 外国の国籍を有する航空機は、これを登録することができない。

出典:航空法

航空機の登録するための要件が定められています。各号(一から四)のいずれかに該当する人が所有する航空機は登録できません。

また、第2項に記載の通り、既に海外で登録されている航空機を日本で登録することはできません。

第五条(新規登録)

登録を受けていない航空機の登録(以下「新規登録」という。)は、所有者の申請により航空機登録原簿に左に掲げる事項を記載し、且つ、登録記号を定め、これを航空機登録原簿に記載することによつて行う。

一 航空機の型式

二 航空機の製造者

三 航空機の番号

四 航空機の定置場

五 所有者の氏名又は名称及び住所

六 登録の年月日

出典:航空法

まだ登録を受けていない航空機を登録する場合の登録の仕方が記載されています。

■所有者が申請するというのは当然ですが、各号(一から六号)に記載の内容と登録記号を「航空機登録原簿」に記載することで登録が完了します。「航空機登録原簿」の詳細は第三条のところで説明しました。

各号の内容を確認してみましょう。

  • 第一号(航空機の型式):型式ですので、例えば、「エアバス式A320-214」や「ボーイング式737-800」です。
  • 第二号(航空機の製造者):製造者ですので、例えば、「エアバス社」や「ボーイング社」になります。
  • 第三号(航空機の番号):航空機の機体番号(製造番号)を記載します。
  • 第四号(航空機の定置場):定置場ですので、空港が一般的です。「東京国際空港」や「関西国際空港」が例です。
  • 第五号(所有者の氏名又は名称及び住所):個人の場合は氏名、法人の場合は名称になります。
  • 第六号(登録の年月日):登録年月日を記載します。

■新規登録をすると「登録記号」が定められます。これについて詳しくみてみましょう。

航空法施行規則」の第百三十三条から第百三十六条に「国籍記号」と「登録記号」の説明があります。

  • 国籍記号:ローマ字の大文字JAで表示しなければならない。(第百三十三条)
  • 登録記号:4桁のアラビア数字又はローマ字の大文字で表示しなければならない。(第百三十四条)
  • 表示方法:国籍記号及び登録記号は、耐久性のある方法で、鮮明に表示しなければならない。(第百三十五条)登録記号は、国籍記号の後に連記しなければならない。(第百三十六条)
  • 表示場所:飛行機の場合の国籍記号と登録記号の表示場所は第百三十七条の第一号に定められています。主翼面と尾翼面か、主翼面と胴体面に表示することになっています。
    • 主翼面:右翼の上面と左翼の下面に表示し、翼の前と後ろの中央の場所で前向きに記載します。ただし、スラットやフラップなどにかからないように表示する必要があります。
    • 尾翼面:垂直尾翼の両側に、縁から5センチ以上離して、水平又は垂直に表示する必要があります。
    • 胴体面:主翼と尾翼の間で、水平尾翼の前側縁のすぐ前に水平又は垂直に表示する必要があります。

Peachのモデルプレーンをみてみましょう。しっかりと法的要件を守っています。

右翼面の上の表示
胴体面(左)の表示
胴体面(右)の表示
左翼面の下の表示
Gemini Jets 1/200 A320-200 Peach Aviation JA801P 1号機 peach ピーチ AIRBUS エアバス A320 JA820P 1/100 樹脂製台座 エバーライズ製

第六条(登録証明書の交付)

国土交通大臣は、新規登録をしたときは、申請者に対し、航空機登録証明書を交付しなければならない。

出典:航空法

航空機を登録した事実として、「航空機登録証明」が交付されます。

「航空機登録証明書」の詳細は、「航空法施行規則」の第二章(航空機登録証明書等)にあたる第七条から第十条に規定されています。

まず様式は、第七条に規定する通り「第三号様式」を使用します。

移転登録や変更登録をした際は、この証明書を差し替える必要があります。(第八条)

証明書を無くしてしまったり、汚したり、破いてしまった場合は、無くしてしまった場合を除いて持っている証明書を添付し、航空機登録証明書再交付申請書(第四号様式)を国交大臣に提出する必要があります。(第九条)

まつ消登録をした場合は、速やかに証明書を返納する必要があります。(第十条)

第七条(変更登録)

新規登録を受けた航空機(以下「登録航空機」という。)について第五条第四号又は第五号に掲げる事項に変更があつたときは、その所有者は、その事由があつた日から十五日以内に、変更登録の申請をしなければならない。但し、次条の規定による移転登録又は第八条の規定による 消登録の申請をすべき場合は、この限りでない。

出典:航空法

変更申請の対象となる事項は、新規登録を受けた航空機ので、第五条の第四号と第五号です。これらに変更があった場合は、15日以内に変更登録申請を行う必要があります。

第五条の第四号は「航空機の定置場」で、第五号は「所有者の氏名又は名称及び住所」です。

ただし、第七条の二の「移転登録」を行い場合と、第八条の「まつ消登録」を行う場合は対象外となります。

第七条の二(移転登録)

登録航空機について所有者の変更があつたときは、新所有者は、その事由があつた日から十五日以内に、移転登録の申請をしなければならない。

出典:航空法

「定置場」や「所有者の氏名及び名称または住所」の変更が「変更登録」でした。これに対して、所有者を変更する場合の登録が「移転登録」で、15日以内に申請する必要があります。

第八条(まつ消登録)

登録航空機の所有者は、左に掲げる場合には、その事由があつた日から十五日以内に、消登録の申請をしなければならない。

一 登録航空機が滅失し、又は登録航空機の解体(整備、改造、輸送又は保管のためにする解体を除く。)をしたとき。

二 登録航空機の存否が二箇月以上不明になつたとき。

三 登録航空機が第四条の規定により登録することができないものとなつたとき。

2 前項の場合において、登録航空機の所有者がまつ消登録の申請をしないときは、国土交通大臣は、その定める七日以上の期間内において、これをなすべきことを催告しなければならない。

3 国土交通大臣は、前項の催告をした場合において、登録航空機の所有者がまつ消登録の申請をしないときは、まつ消登録をし、その旨を所有者に通知しなければならない。

出典:航空法

■航空機の所有者は各号(一号から三号)に該当する場合、「まつ消登録」を15日以内に申請する必要があります。

  • 第一号:航空機が消滅もしくは解体された場合です。例えば事故で物理的に航空機が存在しなくなった場合や、退役した航空機がリサイクルのために解体される場合などです。
  • 第二号:2か月以上行方不明になった場合です。これも事故と思われる状況において機体が発見できないというような場合などです。
  • 第三号:航空法の第四条に抵触する場合です。例えば、所有者が日本国籍を持っていたが、国籍を変えて外国人になった場合、第一号の「日本の国籍を有しない人」に該当しますので、「まつ消登録」する必要があります。その他、第四条の各号には、外国又は外国の公共団体若しくはこれに準ずるもの」、外国の法令に基いて設立された法人その他の団体」、法人であつて、前三号に掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の三分の一以上若しくは議決権の三分の一以上を占めるもの」となっています。また同条2項には「外国の国籍を有する航空機は、これを登録することができない。」とありますので、海外で登録する場合は日本で「まつ消登録」する必要があります。

■上記の条件に該当する場合、15日以内においても7日以上たって申請がされえていない場合は、国交大臣が所有者に対して申請を催告できます。

■国交大臣が所有者に対して申請を催告したにもかかわらず申請が無い場合、15日以上が経過した時点をもって国交大臣が「まつ消登録」を行い、その事実を所有者に通知しなくてはいけません。

第八条の二(航空機登録原簿の謄本等)

何人も、国土交通大臣に対し、航空機登録原簿の謄本若しくは抄本の交付を請求し、又は航空機登録原簿の閲覧を請求することができる。

出典:航空法

誰でも航空機登録原簿の謄本や抄本の交付を受けたりや閲覧することができます。手続きは国土交通省のホームページに詳細が載っています。定められた手数料がかかりますが、窓口や郵送でこれをすることができます。

航空機登録規則」の第八条に請求書に記載しなくてはならない情報が定められています。

  • 請求人の氏名又は名称及び住所
  • 航空機の登録記号
  • 請求の範囲
  • 請求の年月日

第八条の三(登録記号の打刻)

国土交通大臣は、飛行機又は回転翼航空機について新規登録をしたときは、遅滞なく、当該航空機に登録記号を表示する打刻をしなければならない。
2 前項の航空機の所有者は、同項の打刻を受けるために、国土交通大臣の指定する期日に当該航空機を国土交通大臣に提示しなければならない。
3 何人も、第一項の規定により打刻した登録記号の表示を毀損してはならない。

出典:航空法

■新規登録をする場合、国交大臣が登録記号を打刻することが定められています。打刻するに当たり、所有者は国交省と調整をして航空機を提供しないといけません。誰も打刻された表示を壊してはいけません。実際に打刻を行うのは、当然ですが、大臣では無く国土交通省航空局の担当部門が行います。

■打刻の詳細は「航空法施行規則」の第十一条(登録記号の打刻の位置及び方法)に定められています。

  • 打刻の場所:航空機のフレーム、ビームその他の構造部材の見やすい位置と定められています。
  • 打刻の方法:「直接登録記号を打刻する方法」か「登録記号を打刻した金属板を外れないよう取り付ける方法」になります。リースで借りている航空機の場合、契約上直接打刻できな場合がありますので、そういった場合に金属板を取りつける方法が取られます。

第八条の四(新規登録を受けた飛行機及び回転翼航空機に関する強制執行等)

新規登録を受けた飛行機又は回転翼航空機に関する強制執行及び仮差押えの執行については、地方裁判所が執行裁判所又は保全執行裁判所として、これを管轄する。ただし、仮差押えの執行で最高裁判所規則で定めるものについては、地方裁判所以外の裁判所が保全執行裁判所として、これを管轄する。

2 前項の強制執行及び仮差押えの執行に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

3 前二項の規定は、新規登録を受けた飛行機又は回転翼航空機の競売について準用する。

出典:航空法

航空機の強制執行や仮差押えを執行する際の定めが設けられています。最高裁判所規則で定めがある場合とそうでない場合の管轄がわけられています。競売をする場合についても必要事項は最高裁判所規則で定めることになっています。

第八条の五(他の法律の適用除外)

航空機登録原簿については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)の規定は、適用しない。

2 航空機登録原簿に記録されている保有個人情報(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)第二条第五項に規定する保有個人情報をいう。)については、同法第四章の規定は、適用しない。

出典:航空法

「航空法」の第八条の二に定める通り、だれでも航空機登録原簿の交付を受けたり、閲覧することができます。そのため、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」は適用されないという理解です。

また、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」に定める「保有個人情報」の「開示、訂正及び利用停止」(第四章)についても適用外となります。

  • 保有個人情報:行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した個人情報であって、当該行政機関の職員が組織的に利用するものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、行政文書(行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号。以下「行政機関情報公開法」という。)第二条第二項に規定する行政文書をいう。以下同じ。)に記録されているものに限る。(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律 第二条第5項(定義))

第九条(命令への委任)

航空機登録原簿の記載、登録の回復、登録の更正その他登録に関する事項は、政令で定める。
2 航空機登録証明書及び登録記号の打刻に関する細目的事項は、国土交通省令で定める。

出典:航空法

登録に関する事項は「政令」で定め、航空機登録証明書や打刻についての詳細は「国土交通省令」で定めるということです。

ここでいう「政令」は「航空機登録令」で、「国土交通省令」は「航空機登録規則」です。この記事においても、登録に関する内容を「航空機登録令」から、登録証明や打刻について「航空機登録規則」から呼び出しているのは、このためです。

「政令」内閣府が制定する命令で、「省令」は大臣が制定する命令です。詳細はこちらの記事を確認してください。

【航空法解説】航空法の構成

 

なお、当内容は筆者の航空業界での勤務経験を基に、記載されている日付時点の内容を航空法を勉強する人向けに解説するもので、法的手続き等に使用されることを想定していません。