航空法(昭和二十七年 法律第二百三十一号 航空法)を勉強したという人向けの解説です。
航空法第3章「航空機の安全性」(第19条と第19条の2)の内容を解説します。(内容は2025年2月24日時点)
概要
航空法第19条と第19条の2は、総じて航空機の耐空証明に関する規定で、安全運航のための手続きを定めています。
第19条は、「耐空証明を受けること自体の手続きや要件」を規定しており、航空機の基本的な安全性に関する証明を扱います。
第19条の2は、耐空証明を受けた航空機の特定運用条件について規定しており、「通常とは異なる特例的な運用」が焦点です。
第19条(航空機の整備又は改造)
第19条は、耐空証明の「取得」について定めています。
航空機が安全に飛行できる状態にあることを確認するため、航空機の所有者または運航者は、耐空証明を受ける必要があります。
主な内容
- 航空機を運航するには、国土交通大臣から耐空証明を受けなければなりません。
- 耐空証明は、航空機が設計や製造等の各基準に適合し、安全性が確保されていることを証明するものです。
- 耐空証明を受けるには、航空機の強度、構造、性能、騒音、排出物等が検査されます。
適用される状況
- 新しく航空機を運航する場合。
- 機体の修理や改造後に、設計や製造等の各基準への適合の再確認が必要な場合。
意義
耐空証明により、航空機が設計や製造等の条件に適合していることを確認することで、安全運航を担保します。
条文
実際の条文は以下の通りです。
第十九条 航空運送事業の用に供する国土交通省令で定める航空機であつて、耐空証明のあるものの使用者は、当該航空機について整備(国土交通省令で定める軽微な保守を除く。次項及び次条において同じ。)又は改造をする場合(第十七条第一項の修理又は改造をする場合を除く。)には、第二十条第一項第四号の能力について同項の認定を受けた者が、当該認定に係る整備又は改造をし、かつ、国土交通省令で定めるところにより、当該航空機について第十条第四項各号の基準に適合することを確認するのでなければ、これを航空の用に供してはならない。
2 前項の航空機以外の航空機であつて、耐空証明のあるものの使用者は、当該航空機について整備又は改造をした場合(第十七条第一項の修理又は改造をした場合を除く。)には、当該航空機が第十条第四項第一号の基準に適合することについて確認をし又は確認を受けなければ、これを航空の用に供してはならない。
3 第十一条第一項ただし書の規定は、前二項の場合に準用する。引用元:航空法
第19条は、耐空証明の「取得」に関する手続きや要件について定めています。
第19条第1項の趣旨は、「耐空証明のある航空機の使用者は、当該航空機の整備や改造をする場合は航空機整備認定事業場で整備や改造を行い、当該航空機整備認定事業場が耐空性の基準に適合していることを確認しなければ、当該航空機を運航させてはならない」というものです。
正確さに欠けますが、もっと平たく言うと、「航空会社は、機体の整備や改造を航空機整備認定事業場で行い、その認定事業場によって耐空性があることを確認した後でないと、当該航空機を運航に使ってはいけない」という内容です。
耐空証明とは
この条文を正しく理解するには、「耐空証明」の理解が必要です。
そもそもの要件として、航空機の所有者または運航者は、航空機が安全に飛行できる状態にあることを確認するため、耐空証明を受ける必要があります。
この要件は、航空法第11条に規定されています。
第十一条 航空機は、有効な耐空証明を受けているものでなければ、航空の用に供してはならない。但し、試験飛行等を行うため国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
2 航空機は、その受けている耐空証明において指定された航空機の用途又は運用限界の範囲内でなければ、航空の用に供してはならない。
3 第一項ただし書の規定は、前項の場合に準用する。引用元:航空法
耐空証明というのは、航空機に対して国土交通大臣が耐空証明行うことで、その航空機の耐空性を証明するもので、第10条4項各号に適合すると認める場合に発行されます。
これを航空業界では、「適合性の確認」などと呼んだりします。
(耐空証明)
第十条 国土交通大臣は、申請により、航空機(国土交通省令で定める滑空機を除く。以下この章において同じ。)について耐空証明を行う。
2 前項の耐空証明は、日本の国籍を有する航空機でなければ、受けることができない。ただし、政令で定める航空機については、この限りでない。
3 耐空証明は、航空機の用途及び国土交通省令で定める航空機の運用限界を指定して行う。
4 国土交通大臣は、第一項の申請があつたときは、当該航空機が次に掲げる基準に適合するかどうかを設計、製造過程及び現状について検査し、これらの基準に適合すると認めるときは、耐空証明をしなければならない。
一 国土交通省令で定める安全性を確保するための強度、構造及び性能についての基準
二 航空機の種類、装備する発動機の種類、最大離陸重量の範囲その他の事項が国土交通省令で定めるものである航空機にあつては、国土交通省令で定める騒音の基準
三 装備する発動機の種類及び出力の範囲その他の事項が国土交通省令で定めるものである航空機にあつては、国土交通省令で定める発動機の排出物の基準(以降、略)引用元:航空法
簡単にいえば、航空機の強度・構造・性能・騒音・排出物がある一定の基準を満たしており、安全に飛行できると確認できる、つまり、耐空性を有していると確認できる場合に、耐空証明を受けることができるということです。
第19条の2(航空機の整備又は改造)
第19条の2では、耐空証明を受けた航空機を運航する際の「特例的な運用」について規定されています。
具体的には、耐空証明を受けた航空機の使用者が、通常の運用基準とは異なる条件下で飛行を行う場合について、国土交通大臣の承認を得ることが必要だとしています。
主な内容
- 特例として、試験飛行や研究目的で使用する航空機は、改造などを行った後でも耐空証明を受けずに運航することが認められる場合があります。
- その場合、運航者は国土交通大臣の承認を受けなければなりません。
- この規定は、試験飛行や特殊用途の運航を円滑に行うための柔軟な措置です。
適用される状況
- 新型航空機や装備品の試験飛行を行う場合。
- 特定の研究や訓練目的で耐空証明が不要な運航が認められる場合。
耐空証明を受けた航空機でも、以下のような状況では第19条の2に基づく承認が必要となる可能性があります。
- 改造後の試験飛行
- 例:エンジンや装備品を改造し、その性能を確認するための飛行。
- エンジン試験を例にすると、耐空性のある航空機に改造を施し、試験するエンジンを追加で搭載して試験する場合があります。
- 特殊用途での運航
- 例:科学観測、空中写真撮影、広告飛行など。
- 非常時の運用
- 例:緊急事態や災害支援のための特殊運航。
意義
研究開発や試験飛行をスムーズに進めるため、一定の条件下で例外的に耐空証明なしの運航を認めることで、航空産業の発展や技術革新を支援します。
条文
実際の条文は以下の通りです。
第十九条の二 航空法第耐空証明のある航空機の使用者は、当該航空機について次条第一項第四号の能力について同項の認定を受けた者が当該認定に係る整備又は改造をした場合(前条第一項の規定により同号の能力について次条第一項の認定を受けた者が当該認定に係る整備又は改造をしなければならない場合を除く。)であつて、国土交通省令で定めるところにより、その認定を受けた者が当該航空機について第十条第四項各号の基準に適合することを確認したときは、第十七条第一項又は前条第二項の規定にかかわらず、これを航空の用に供することができる。
引用元:航空法
第19条と第19条の2の違い
項目 | 第19条 | 第19条の2 |
---|---|---|
主たる内容 | 航空機の耐空証明の取得義務 | 耐空証明を受けずに運航できる特例規定 |
目的 | 航空機の安全運航を確保するための証明 | 試験や研究目的の柔軟な運用を認める |
手続きの対象 | 耐空証明を新たに取得する場合 | 耐空証明を受けた航空機で特定の用途や条件で飛行する場合 |
手続きの主体 | 航空機の所有者または運航者 | 特例適用を求める運航者 |
適用される状況 | 通常の航空機運航 | 試験飛行や研究目的の運航 |
必要な手続き | 耐空証明を受けるための検査と申請 | 国土交通大臣の承認を取得 |
例 | 航空機の新規取得、航空機修理後の再認証 | 試験飛行、特殊用途(広報、調査など) |