NewJeansの “What’s your ETA” と航空の意外な関係

NewJeans の “What’s your ETA” は全体的に韓国語で構成された曲ですが、サビの部分は英語で書かれていて、とてもキャッチーですね。

今回はこのキャッチーな曲と航空との意外な関係について考察します。

目次

“What’s your ETA?” とはどういう意味か?

まず “ETA” は “Estimated Time of Arrival” の頭文字を取った略語で、「到着予定時刻」という意味です。

つまり “What’s your ETA?” は、 “What is your estimated time of arrival?” となり、「あなたの到着予定時刻はいつ?」という意味になります。

もう少し口語的に訳すと「いつごろ着く?」という意味になります。

英語の部分の歌詞のながれから考えると、「早く来て」というのがちょうどいい意訳になりそうです。

We can go wherever you like
Baby, say the words and I’m down
All I need is you on my side
We can go whenever you like

Now, where are you? (Mm-mhm)
What’s your ETA? What’s your ETA? (Mm-mhm-mm)
What’s your ETA? What’s your ETA? (Mm-mhm)
*What’s your ETA? What’s your ETA?*
*I’ll be there right now, lose that boy on her arm*

https://genius.com/Newjeans-eta-lyrics

航空との関係

この “ETA” は、実は、航空業界ではオペレーション(運航)を中心に頻繁に使われています。

例えば「31便のETA何時ですか?」という感じで、到着予想時刻を確認したりします。

“ETA”は英語の略語であるととともに、航空業界での専門用語でもあります。

航空業界で使う略語

航空では、他にもETAに似た略語がたくさんあります。

STA:Scheduled Time of Arrival 定刻到着時刻で、時刻表に記載されている到着時刻

ATA:Actual Time of Arrival 実到着時刻

STD:Scheduled Time of Departure 定刻出発時刻

ETD:Estimated Time of Deperature 出発予想時刻

ATD:Actual Time of Departure 実出発時刻

航空での略語の定義

航空で使われている “ETA” をはじめとする、さまざまな到着や出発を意味する略語を紹介しました。

航空業界では、厳密にいつを出発や到着とするかの定義がされています。

これらについて紹介していきます。

出発時刻の定義

ほとんどの会社が、プッシュバックの開始時刻を出発時刻としてます。

プッシュバックとは、飛行機がゲートから離れて滑走路に向かうために、牽引車でバックしてもらうことを言います。

プッシュバックが必要のない自走式のゲートの場合は、車輪が前方に回転しだした時刻になります。

この時刻は、機内で運航乗務員が記録します。

羽田空港などで、「出発時刻とは、飛行機が動き出す時刻です。」という注意書きを見たことはないでしょうか。

出発時刻に搭乗すればいいと思っている乗客がいると出発が遅れてしまうので、その予防のためにこういう注意喚起をしています。

出発時刻よりも前に、余裕を持って乗り込みましょう。

到着時刻の定義

到着時刻は、航空会社によって定義が異なることが多いです。

機体がゲートに入ったあと、チョーク(車止め)を入れた時刻・ドアが開いた時刻・エンジンを止めた時刻などが考えられます。

どの時間にするかによって運航成績(運航品質)に影響があるため、複数の時刻を目的にあった内容に設定しモニタリングするのが一般的にです。

例えば、機体が到着していても、旅客や地上取扱業務の事情で搭乗橋やタラップの設置が遅れたりする場合があります。

運航乗務員の立場からすれば、せっかく定刻に到着したのに遅延とされるのは正当ではないと感じるでしょう。

この場合は、運航の到着時刻をチョークを入れた時間とすることで、運航自体は定刻到着したと解釈することにします。

遅延の理由を地上取扱いとし、対策を取れるようになります。

ちなみに、遅延の理由を表すDelay codeというものがあり、運航品質では一目で遅れた理由の種類がわかるようになっています。

このDelay codeなどの情報を統計的に分析し、航空会社は定時運航に向けて改善を重ねています。

一方で、搭乗客からすれば、ドアが開いて航空機から降りて初めて到着となるわけですから、チョークが入れられた時刻はどうでもよいことです。

会社全体の運航品質、つまり顧客満足度という観点からは、「ドアが開いた時刻」を到着時間としてモニタリングする必要があります。

その他 航空業界における時間

勤務時間

勤務時間は、社員としてのパイロットの勤怠で、空港の指定された出頭場所に出頭(出社)してから勤務終了(退勤)するまでの時間です。

便間で休憩がある場合、勤務の中断とされ(勤務の中断をするには、体を横にして休息できる場所を提供するなど、一定の条件がある)勤務時間には含まれません。

勤務の中断は、運航便の大幅な遅れなどの際に取られることがあります。

国土交通省の定義は、「会社指示により業務を開始した時から全ての業務を終了するまでの時間」です。

乗務時間

パイロットが航空機で乗務する時間で、航空機に乗り込んで運航を終えて航空機から降りるまでです。

国土交通省の定義は、「航空機が離陸のために所定の場所で移動を開始してから着陸後所定の場所で
停止するまでをいう。(一般的に使用されるブロックタイムと同義)」です。

飛行時間

乗務時間のうち、パイロットが実際に航空機の運航に携わった時間です。出発から到着までになります。

飛行勤務時間

飛行時間に勤務時間の一部を加えた時間です。

パイロットの疲労リスク管理などで使われるものです。

国土交通省の定義は、「乗務を伴う一連の勤務であって、会社指示で行われる全ての業務(乗務、地上
業務、訓練、移動(通勤を除く)等)のために勤務を開始した時から最後の乗務が終了するまでをいう。一連の勤務内に乗務を行わない場合は、飛行勤務時間には含まれない」となっています。

ターンアラウンドタイム

LCC(Low Cost Carrier:格安航空会社)などで重要になる、機体が到着してから次の便として出発するまでの時間です。

つまり便間で、地上にいる時間のことです。

航空機が地上にいる間は、ただの鉄の固まりで、航空会社は1円も儲けることはできません。

そのためLCCでは、便数を増やすため地上にいる時間を最小限にすることを目的に、ターンアラウンドタイムをモニタリングしています。

一方、レガシー航空会社の国際線のような便になると、数百人分の機内食の準備や旅客の荷物以外の貨物の搭載、燃料給油などでかなり長い時間がかかります。

旅客の乗り降りだけでも1時間くらいかかる可能性もあります。

テイクオフタイム

航空機が滑走路から離陸した時刻です。

ランディングタイム

航空機が滑走路に着陸した時刻です。

タキシータイム

航空機が誘導路を移動するのにかかる時間です。

滑走路とゲートの間の移動でどれくらいの時間がかかるかをはかったりします。

ホールドオーバータイム

防除雪氷をしてから離陸するまでに許させている、猶予の時間です。

混雑時などで離陸が遅れ、ホールドオーバータイム以内に離陸できない場合は、防除雪氷の効果が薄れ雪が翼上に積もってしまい浮力を受けられなくなるため、防除雪氷のやり直しになります。

ホールドオーバータイムの詳細や、飛行機の利用において雪の季節に気を付けるべきことはこちらの記事で紹介しています。

まとめ

“What’s your ETA?” は、 “What is your Estimated Time of Arrival?” で、「あなたの到着予定時刻はいつ?」という意味になります。

NewJeansのサビの歌詞の意味から考えると「早く来て!」というのが、ちょうどいい意訳になりそうです。

その他、ETAを始めに航空業界で使われている時間に関する略語やいろいろな時間の定義を解説しました。