今回は私の留学経験から、長期留学・短期留学・ワーキングホリデーの違いについて説明します。それぞれの長所と短所を実例で解説します。
選択肢で悩んでいる人や、違いがわからなくて困っている人の参考になれば幸いです。
私は中学校在学中に短期留学をし、大学と大学院で長期留学をした経験があります。長期留学中にはワーキングホリデーの人とも多く触れ合うことがありましたので、これらの経験をもとに解説します。
目次
目的の違い
長期留学・短期留学・ワーキングホリデーそれぞれの一般的な目的は下記の通りです。
長期留学
学力向上や専門知識を身に着けることが目的で、学士号や修士号、博士号などの学位の取得を目標とすることが多い。そのため、学位の取得に要する期間滞在する。
短期留学
言語力の向上や異文化に触れることが目的で、語学学校や専門学校の修了を目標とすることが多い。1年未満から2年くらいが滞在期間となる。
ワーキングホリデー
いわゆる「ワーホリ」です。文字通り、働きながら過ごす休暇のこと。アルバイト等をしながらその国で過ごす休暇で、専用のビザがあり滞在期間が限られている。
長期留学は言語を使って学位取得など何かを達成することが目的ですが、短期留学は言語力の向上を目的としていることが多いです。ワーキングホリデーは、休暇そのものが目的となります。
長所と短所
ではそれぞれの長所と短所をみていきましょう。
長期留学
・長所
滞在期間が長く、専門的な知識を身につけられる長期留学の長所は下記があります。
②専門知識を身に着けることができる
③世界中にネットワークを作れる
④言語力を向上できる
⑤文化が身につく
⑥永住権が取りやすくなる場合がある
⑦その他、短期では経験しないことが経験できる
①学位を取得できる
長期留学をする一般的な目的は学位の取得です。
長期留学では、専門学校、大学、大学院に通うことができますので、学位を取得することができます。
例えば私が留学していたオーストラリアでは、例えば下記のような学位があります。
・Diploma(ディプロマ):日本には無い概念ですが、大学の1年目にあたる学位です。専門学校などで取得できる学位です。
・Bachelor(バチェラー):日本の学士号にあたる学位です。
・Honours(オナーズ):Bachelor等の修了者のうち、成績優秀者のみが進める追加の課程を修了した者に与えられる学位です。
・Master(マスター):日本の修士号にあたる学位です。
・Doctor(ドクター):日本の博士号にあたる学位です。修了すると医師でなくても「ドクター」と名乗ることができます。
②専門知識を身に着けることができる
学位を取得するということは、専門的な知識を身に着けることができるということです。
海外の高等教育は、日本よりも進んでいる部分も多く、より品質の高い教育を受け専門的な知識を身に着けることができます。
私の場合、航空学を大学で専攻しました。この大学では、日本の大学が航空学を導入する何十年も前から教育しているため、品質の高い教育を受けることができました。実際に授業を教えているのが業界の出身者であり、私が通っていた大学院では、OzJetの元CEOでRegional Express Airlinesの元役員が授業の一部を担当していました。
ちなみに、桜美林大学や東海大学にも航空学の課程はありますが、訓練の段階になるとアメリカなどの海外に行くことになりますが、海外の大学では、座学から訓練まで一貫して同じ大学内で受けることができます。
当サイトでも取り上げている大学ランキングはこちらです。
日本の大学よりもレベルが高い大学はたくさんあります。
③世界中にネットワークを作れる
大学や大学院で共に学ぶ仲間や、日常生活やアルバイトなどを通して友達ができ、世界中にネットワークができます。
私は大学と大学院を出ましたが、今でも交流が続いている外国人の友人は多いです。
例えば、カンタス航空のパイロットや整備士、ジェットスターの乗員計画、香港のキャセイパシフィックのパイロットやCA、ドイツのルフトハンザ航空の経理、コロンビアの航空管制官、仁川空港の役員など航空におけるネットワークを世界中で持つことができました。
④言語力を向上できる
長期的にその国に滞在すれば、例外を除き、自然と言語力も向上します。もちろん、大学等に入学するにはある程度の言語力があることが要求事項の一つになっています。
例外というのは、私も現地でみてきましたが、日本人とつるんでいる日本人は残念ながら英語が話せない人が多いです。こういう人たちは、もちろん少しは英語が話せますが、現地の企業に就職できるようなレベルかというと、無理です。それどころか、大学の論文を書くのに苦労し、学位が取れるのもギリギリという人もいました。
そういう英語が話せない日本人の特徴はこちらで紹介しています。
⑤文化が身につく
その国で長期的に生活するわけですから、スーパーでの買い物、テレビ、レストランや飲み屋などその国の文化が反映された中で生活をすることになります。自然とその国の文化が身につきます。
これも残念ながら上記④と同じ例外があります。
⑥永住権が取りやすくなる場合がある
誰でも永住権が取れるわけではありません。その国が必要とする資格や経験を持った人に永住権を与え、国にとってプラスになるようにするのが一般的な考え方です。
その国の条件(学位、資格、専門性、言語力、年齢、職歴 等)を満たすことができれば永住権も夢ではありません。
例えばオーストラリアでは、会計士や看護師の資格が優遇されている時期がありました。そのため、大学で関係の課程を修了すると永住権が取りやすくなったりします。
国によって条件が異なりますので、永住権を狙って長期留学する人は事前によく調べましょう。
⑦その他、短期では経験しないことが経験できる
長期留学では学生生活に加えて、賃貸契約、銀行口座の開設、ビザの更新、水道ガス電気の開通、電話やネットの契約、健康診断の受診、年末調整の申告、運転免許の取得、アルバイト、ボランティアなど、短期ではあまり経験できない現地の人と同じ生活を経験できます。
・短所
長期留学の短所は下記があります。
②就職活動が限られる
③孤独を感じる
①費用がかかる
・学費
当然、高等教育を受けるのには学費が必要です。
大学や大学院は日本の私立大学くらいの学費が一般的な額だと思いますので、海外だから異常に高いということはないと思います。もちろん学部によって変わりますので、事前によく調べる必要があります。
なお、学費を日本の国公立くらいの学費に抑えることができたり、全額免除してもらえる制度もあります。アメリカなどは非常に進んでいて、成績優秀者は学費全額免除で生活費さえも出してくれる大学もありますが、この権利を手にできる人はごくわずかですので、基本的には全額負担と考えておくべきでしょう。
・生活費
家賃は学生寮に入れば安くできたり、上記のように成績優秀者の場合家賃免除ということもあります。住む場所によりますので一概に言えませんが、感覚としては日本の大学生が一人暮らしするような1Kの家賃よりも高めになると思います。
物価が高い国では日本で生活するよりも費用がかかります。特に外食はお金がかかります。オーストラリアでは例えば、カジュアルなお店でスパゲティを食べようとすると大体$15~$25かかりますので自炊が大事になります。
・帰省費用
国際線の長距離移動ですので、航空券代がかかります。近年はLCCなどを利用して旅費を抑えることは可能です。日本に帰国しての就職活動は、できるときにいっきにやらないと往復で膨大な費用がかかります。
②就職活動が限られる
日本で就職しようとする場合です。
限られるというと誤解があるかもしれません。タイミングが難しいというほうが正しいです。
日本の大学と卒業時期が一緒にならない場合もありますし、日本の学生の就職活動時期に合わせると、海外から日本に面接の都度わざわざ大学を休んで帰省したりすることになります。初期段階の面接で旅券代を負担してくれる企業はほとんどないです。
海外主要都市でキャリフォーラムなどが開催されていますので、それに参加するのもよいでしょう。一部の企業は海外で面接してくれるところもあります。
近年はスカイプなどで初期の面接を済ませ、最終面接だけ日本でやる場合もあるようです。
③孤独を感じる
私が留学開始したのが2007年でした。この時代を振り返ると、ガラケーがまだ主流で、初代iPhoneが発売された年だったと思います。私はドコモのN900iを使っていた記憶があります。
ラインなどのSNSも普及していませんでしたので、hotmailのアカウントを一つ作り渡航しました。それが唯一の日本との連絡手段でした。
今はいろいろなSNSもありますし、インターネットで通話ができますので日本から遠く感じることは少ないでしょう。
ただ、気を付けないといけないのが、長所「④言語力を向上できる」に書いた例外の内容です。言語力を圧倒的に向上させるためには日本との関係を薄くしたほうがよいです。日本語を読む・聞く・話す・書く時間を減らし、英語漬けにすることが大事です。現地の友達を作り、その国の人のように生活するとよいでしょう。
これをやると面白いことに、言語力が上がり、現地出身の友達が増え、文化が身につき、全体的なスキルが向上していくのが手にとるようにわかりますが、強い孤独感を感じるようになります。日本で生まれ育った人の場合、年齢が若ければ若いほどこの孤独感は強くなると思います。
短期留学
・長所
②必要な知識と経験だけを身に着けることができる
③就職活動に支障が少ない
①費用が安い
多くの人が語学留学等で、語学学校や専門学校に通います。そのため、長期留学と比べると、学費がかかりません。
日本の大学の交換留学であれば、ほとんどの費用はすでに学費に含まれているでしょう。
②必要な知識と経験だけを身に着けることができる
大学などの高等教育機関で専門知識を身につけるのはとても有意義なことですが、一方で単位取得のため希望しない教科も勉強しなくてはならない無駄があることも事実です。
その点、短期留学では、専門学校などで必要な内容のみを短期的に学ぶことが目的ですので、無駄がなく学びたい内容だけを学ぶことができます。これは留学に限ったことではなく一般的な考えです。
③就職活動に支障が少ない
必要な内容を短期的に勉強しますので、大学や大学院への留学と比べると時間が柔軟に使えます。
例えば、日本の大学による交換留学などの短期留学では日本に帰国してから就活が可能です。
・短所
②言語力の向上に限界がある
③その他活動が認められない場合がある
①取得できる学位が限られている
その目的から滞在期間が短いですので、取得できる学位にも限りがあります。短期留学の目的が達成されればよいのであまり気にする必要はないかもしれません。
②言語力の向上に限界がある
これも滞在期間に関するところで、言語に触れる期間が短いため長期留学と比べると、言語力の向上に限界があります。長期留学では、その学位や専門知識と、高い言語力で現地の企業に就職できるようなレベルになれますが、短期留学では難しいでしょう。
短期留学でも言語力を向上したいと言う人は、ホームステイを選択し、常に英語に囲まれた生活をするのが良いでしょう。
③その他の活動が認められない場合がある
例えばアルバイトですが、長期的に働かない場合、採用してくれないこともあります。
法的な要件もあります。例えば、ビザの内容によっては就業が認められない場合があります。短期留学として入国してきた外国人がその後その国に残り不法就労していたりする国では規制がある場合があります。就労を前提とする場合、事前の確認が必要です。
ワーキングホリデー
・長所
①長い休暇をとることができる
唯一の長所で、目的そのものになりますが、働きながらやボランティアをしながら長い休暇をとることができます。国によって年齢制限や期間に制限がありますので事前に調べておきましょう。
・短所
②言語力が向上しない
①経歴に穴があく
例えば就職前であれば問題ありませんが、就職後にワーキングホリデーをすると再就職が難しくなる場合があります。
中にはワーキングホリデーに出た理由や目的が明確で、それが自分にとってどのような経験や学びをもたらしたかなどを説明できればよいとみる企業もあります。
ただ、全体は休暇であることを忘れてはいけません。
そのため、下記のような考えを持っている人は要注意です。
日本が嫌だから、一時的に脱出してワーホリやっていつか日本に帰ってこよう。
→就職や再就職が難しくなることも。
とりあえずワーホリであの国にいって、そのうちその国で就職しよう。
→外国で働くには、ビジネスビザか永住権が必要です。ワーホリからこれらの取得というのは、茨の道です。
②言語力が向上しない
英語ができないと、現地の店はアルバイトとして採用しづらいです。そうすると日本料理の店などで働くことになり日本語をたくさん使います。日本人の友達ができ、ほとんど英語を使わなくなります。これは例外として話したのと同じです。
言語力を向上させるには、日本人がいない農家などのワーキングホリデーで外国人とみっちりコミュニケーションを取るようにすると良いでしょう。
まとめ
長期留学、短期留学、ワーキングホリデーの目的と長所短所は下記の通りです。
・長期留学
目的:学力向上や専門知識を身に着けることが目的で、学士号や修士号、博士号などの学位の取得を目標とすることが多い。そのため、学位の取得に要する期間滞在する。
長所:
②専門知識を身に着けることができる
③世界中にネットワークを作れる
④言語力を向上できる
⑤文化が身につく
⑥永住権が取りやすくなる場合がある
⑦その他、短期では経験しないことが経験できる
短所:
②就職活動が限られる
③孤独を感じる
・短期留学
目的:言語力の向上や異文化に触れることが目的で、語学学校や専門学校の修了を目標とすることが多い。1年未満から2年くらいが滞在期間となる。
長所:
②必要な知識と経験だけを身に着けることができる
③就職活動に支障が少ない
短所:
②言語力の向上に限界がある
③その他活動が認められない場合がある
・ワーキングホリデー
目的:いわゆる「ワーホリ」です。文字通り、働きながら過ごす休暇のこと。アルバイト等をしながらその国で過ごす休暇で、専用のビザがあり滞在期間が限られている。
長所:
短所:
②言語力が向上しない